無農薬表示について

  農産物の種類には大まかに分けて次の三種類があります。

有機農産物      有機JAS法に基ずく認証を受けている場合だけに認められるもの。
               有機農産物と名乗る為に必要な、国が定めた基準に合致している
               農産物です。
 
特別栽培農産物   減農薬や減化学肥料など、各地域や団体、県などで国の定めたJAS法
               とは異なる独自の基準を定め、それに沿って栽培された農産物です。
               普通に無農薬として販売されているものもここに入ります。

慣行農産物       これは普通に行われている、農薬も化学肥料も使用して栽培された
               農産物です。

 以上、全ての農産物は一応上の三つのカテゴリーのどこかに入ります。
人々の健康志向の高まりから、一時期は、「有機農産物」である、という事が一つの指標とされる
時代がありましたが、様々な有機農産物が登場することになり、一定の基準を設けた方がよいだろうという事で、流通の適正化を計る目的で、平成12年に改正JAS法が施行されました。
これによって、勝手に農産物に「有機」や「オーガニック」と表示する事はできなくなりました。
表示する為には、国に登録された認定機関の審査・検査を受けて認定を受けなければなりません。
色々議論のある法律であり、万全ではないものの、一定の効果をもたらし、流通市場からは、
「有機」という言葉はほとんど消えてしまったと思います。
現在認定を受けて生産されている有機農産物は全体の0.2%程度との事ですから、スーパーなどで、有機の文字を見ることはめっきり少なくなったと思います。
そしてかわりに登場してきたのが、「無農薬」という言葉です。
無農薬栽培とはなんでしょう? 上の三つのカテゴリーのどこに入るのでしょう?
無農薬表示について少し考えてみましょう。

無農薬表示とは ? 
 まず、有機JASマークの貼付された有機農産物の場合。
食品に関する国際基準は、FAO(国連食糧農業機関)と、WHO(世界保健機構)との合同で設置されているコーデックス委員会によって策定されています。
1999年に、有機食品の国際ガイドラインが、委員会の総会で採択されました。
これは国際的なガイドラインですから、日本でもこれを受けた形でJAS法が改正されたわけです。
何故このように決まったのか、詳細までは良く解らないのですが、結論を言いますと、農薬も使用しても良いという事になっています。完全無農薬にしてしまうと、取り組む農家がいなくなってしまうかもしれない、という事である程度間口を広げる為に使用できる゛許容農薬゛という物を決めたのかもしれません。
まあ、内容はともかく、結論的には有機農産物は無農薬ではない事もあるということです。
完全にイコールではないのですが、除草剤及び化学肥料及び化学合成された添加物等は一切使用できませんし、使用が可能とされている農薬類も無制限に使用してよいという事ではなく、あくまでもやむを得ない場合に限ってのみ、限定的に使用が認められているものです。
JASマークには、栽培責任者(生産工程管理責任者)と認定機関の記載が必ずありますので、疑念がある場合には、詳細を確認する事ができます。
申請にあたっては、A4で30枚位の書類を作成しなければなりませんし、認定機関からの書類審査、および現場圃場の検査を受けなければなりません。 勿論それなりに費用もかかりますので簡単な事ではなく、そこまでして認定を受けているわけですから、それだけの認識のある生産者だけが認定を受けています。 安全性という面からみれば、これ以上のものはなく、国の規格であるJASを付けているだけの価値はあるわけです。

JASマークは国の定めた基準ですから、シールさえあればそれ以上の説明は要しないものです。
問題は、こうした公的証明の無い場合で「無農薬」を謳っている場合です。
これらは全て、有機農産物ではなく、特別栽培農産物のカテゴリーに入るものですが、そのパターンには様々なものがあります。
特に紛らわしいのが、「栽培期間中無農薬」というものです。これは別に説明の必要もなく、栽培期間中だけは無農薬、という事です。雑穀の場合には生育期間は、3〜4ヶ月位ですから、それ以外の期間はバンバン使用しているという事です。
また、栽培期間という言い方にも問題があります。特に定義があるわけではありませんので、どこからどこまでが栽培期間なのかが解りません。 普通に考えて「種まきから収穫まで」と考えますと、例えば種まきの一ヶ月位前に除草剤を打って化学肥料をばら撒き、下準備を済ませてしまう事も可能です。
あくまでも、種蒔いた後に殺虫剤などの農薬を使用しなければ、それで栽培期間中無農薬は成り立ってしまいます。別に嘘をついているわけではなく、実際に栽培期間中に限っては確かに無農薬です。
こうしたやり方は「循環型農薬栽培」と呼ばれ、実際にやられている方法だそうです。
農薬・化学肥料を使っている慣行栽培の畑で、無農薬で雑穀を作る、その後はまた農薬と化学肥料で野菜をつくるという循環型の農法で、雑穀をつくる四ヶ月位だけが無農薬でその前後にはたっぷり使っているというものです。 

何故こうなるかというと、全期間に渡って無農薬栽培というのが実に大変な事だからです。
更には、雑穀の裏作の問題があります。
少し説明しましょう。 田圃で米が作られるのは誰でもご存知でしょう。水田の場合は連作障害というものがありませんので、毎年同じ田圃で米を作ることができます。
しかし、畑の場合は毎年同じ作物を作り続けるという事ができないのです。連作障害といいまして、同じ作物を作り続けているとだんだん取れなくなってきます。そこでこれを回避する為に輪作といいまして、畑の作付け作物を毎年替えて行かなければならないのです。
厄介なことに、ひえ・あわ・きび等の雑穀は、全てイネ科作物ですので、これだけを毎年作るというわけにはいかないのです。 私の場合は裏作に豆類を作付けしていますが、豆は価格的に安いものですから、採算的にはなかなか合わないです。 だから、生産者としては、雑穀の裏作に慣行で野菜を作る農家の気持ちは良く解ります。高く売れる野菜を作らなければ収入にならず、生活していくことはできないからです。ですから、私としてはこうしたやり方も仕方がないという側面もありますので、批判するつもりはありません。 「循環型農薬栽培」でやらざるを得ない農家側の事情というものも確かにあるのです。

栽培履歴が重要だというのはこの点にあります。普通に考えて、無農薬栽培と聞くと「ああ、農薬は使っていないのだから安心だ。」と思うわけですが、将にそう思ってくれるだろうというのが狙いなわけです。
「無農薬作物」には、何かはっきりとした基準や定義があるわけではありません。
「除草剤は農薬ではない。」と言いきる農家の方もいます。現在ではあまりにも使用が一般的になってしまった為に、農業上の一つの技術である、と捉えている節があって、危険な農毒とはどうも思っていないようです。
無農薬という言葉は一つでも、その内容は゛ピンからキリまで゛というのが現状です。

農薬は使用していないが、化学肥料は使用している場合もあります。
化学肥料は農薬とは違いますから、使用しては駄目だということはありませんが、無化学肥料の記載が無い場合には、化学肥料は使用している可能性は大です。生育・収量を伸ばす為には化成を使った方が効率的だからです。

無農薬といっても、どのようなパターンの無農薬なのか、その内容まではわからない。

結論的にはこうなると思います。 安全の為に無農薬のものを希望される場合には、こうした事をはっきり説明してくれるところを選ぶべきだと思います。
要は、トリサビリティーの問題であり、情報公開のはっきりしているところを選ぶべき、という事になると思います。
今は、農家の産直市場が全国的に盛んですから、皆さんも覗いた事があると思います。
農産物の前に生産者の名前と顔写真が貼ってあると、なんとなく安心しませんか。
この人が作っているのか、と確認できることは本当に安心なものです。多少は農薬を使用していても、あまり気にはならないと思います。それぐらい、相手が誰かと確認出来る事の安心感は何物にも替えられないものだと思います。
やはり問題は、生産者からではなく、販売店から購入する場合でしょう。
ワンクッション置くことによって、なんとなく全てがボケてしまうのです。
生産者の名前だけでなく、圃場・過去数年の栽培履歴・生産方法のより詳しい情報、こうした事を聞いても即答してくれないショップからの購入は避けた方が無難だと思います。
最悪の場合、何ら裏づけがないままに、売る為だけに無農薬と言っているだけという場合も考えられます。 当然無農薬であるとの何らかの確証のもとに責任を持って販売されている事と思いますが、
農家が無農薬と言っているので無農薬として販売しているというだけの事かもしれません。

実際のところは偽装表示があった場合でも、それを見抜くというのはなかなか困難です。
理屈ではなんとでも言えるものだからなのですが、女性は右脳感覚が優れているといわれています。
いわゆる「女の直感」ですね。 ちょっと変だなと感じた場合には、さっさとお付き合いをやめるのが賢明な選択だと思います。 あまり回りの情報に振り回される事無く、自らの感性に素直に従うのが一番良い方法だと思います。 他を批判しても仕様がないですしね。
なんか変な結論になってしまいましたが、無農薬という場合の様々なパターンと、何故そうなるのかについて少し説明してみました。

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